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『万事快調〈オール・グリーンズ〉』感想・レビュー|これはヤンキー映画である

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映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』

映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』はヤンキー映画である、という話

殴らない。特攻服も着ない。それでもこれはヤンキー映画だと言い切る。異論は認めない。そもそも喧嘩のシーンがあるかどうかでジャンルを判定してる連中は、映画の見方が3周くらい遅れている。とはいえ数分前まで自分もその連中の一員だったので、あまり大きい態度も取れないのだが。

 この映画、単純にかっこいい

これから理屈をこねくり回す前に、一つだけ言っておきたい。この映画は画そのものがかっこいい。タイトルロゴが入るタイミング、あの間の取り方だけで一本しっかり作品として成立している。それだけで観る価値がある、と言い切ってもいい。

朴秀美のファッションもいい。古着を纏った、あのB-girl然とした佇まい。ラップという表現手段を選んだ人間の説得力が、服の一枚一枚から滲み出ている。俺自身あの古着をネットで探してしまったぐらいに。

①非合法性

ヤンキー映画には、必ず非合法な何かが挟まる。喧嘩でも、特攻服でも、バイク泥棒でも構わない。法の外側に出る瞬間があること——それがヤンキー映画のお約束だ。だとすれば、ハッパを育てるという行為もまた同じテンプレートの上に乗っている。

面白いのは、その非合法性が血のように受け継がれていることだ。朴秀美は一人で飯を食うとき、片膝を立てる。あんなに嫌っている父親と、まったく同じ食い方で。人は誰かを憎むとき、自分だけはその人間と違うと思いたがる。誰も見ていないところでさえ、逃れられないものは逃れられないまま出てくる。俺にも似たような癖の一つや二つあるので、正直あまり人のことは言えない。

ちなみにこの文章でずっと「朴秀美」とフルネームで書いているのは意図的だ。劇中、美流紅は最後まで彼女をフルネームで呼び続ける。名前から逃げられないのは、血だけの話じゃないのかもしれない。

 ②底辺高校

そしてヤンキー映画には、必ず底辺高校が舞台に選ばれる。進学校を舞台にしたヤンキー映画など見たことがない。閉塞感のある場所でなければ、そもそもこのジャンルは成立しないというお約束が、暗黙のうちに存在している。

だからこそ、この映画は"閉塞感からの脱出"を執拗に描く。美流紅が部活を辞めた次の日、園芸部としてゴミ捨て場で機材を漁っていると、その背後を運動部が楽しそうに歩いていく。同じ学校にいながら、片方は縛られたまま、片方はどこかへ向かって歩いていく。その対比の中に、底辺高校という舞台そのものが持つ"出口を探す物語"の輪郭が透けて見える。青春映画のくせに出口の話ばかりしてくるので、観ているこっちまで人生の出口を探し始めてしまう。厄介な映画だ。

③仲間を裏切らない

そしてヤンキー映画には、必ず"仲間を裏切らない"という展開が挟まる。これはヤンキーという人間の美徳の話ではなく、ヤンキー映画というジャンルのお約束だ。仁義、忠誠、裏切り者への制裁——このテンプレートを踏まなければ、その映画はヤンキー映画を名乗る資格がない。この映画もきっちりそれをやってくる。律儀なものである。

④疾走感

そしてヤンキー映画には、必ず疾走感がある。『万事快調〈オール・グリーンズ〉』もその例に漏れない。三人とも、悩んでいないわけじゃない。むしろずっと悩んでいる。それでも映画は一切立ち止まらない。悩みを抱えたまま、考える暇もなく次のシーンへ次のシーンへと押し流されていく。立ち止まって整理する余裕なんて、最初から与えられていない。実際、劇中で三人が走るとき、それは決まって逃げているときだ。追われるように走り、追われるように悩む。その二つが分かちがたく結びついているのが、この映画のスピード感の正体なのかもしれない。

サンプリングとオマージュ

この映画はサンプリングやオマージュがわかりやすい。美流紅がルールを畳み掛けるように語るシーンは、まんま『ファイト・クラブ』だ。一つ目のルール、二つ目のルール、と続いていくセリフそのものを借りている。あるいは、火事の黒煙が画面に立ち上るあのショット。あれは『天国と地獄』だろう。異物のように空へ伸びていく煙の使い方が、あまりにも意識的だった。

サンプリングやオマージュって、見抜けるとつい誰かに話したくなる。わかった瞬間、自分が少し賢くなった気にもなれる。そう考えると『万事快調〈オール・グリーンズ〉』は、映画を語り始めたい人間にとって、ちょうどいい入門編なのかもしれない。俺も今まさにその欲求のままにこの文章を書いている。

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』 原作との違い:名前の話

原作では、三人それぞれの名前にまつわる話がそこそこの分量で描かれる。朴秀美は祖母だけが韓国語読みで呼ぶこと。真子は「いわくまこ」と略されることに納得していないこと。この二つは映画では丸ごと省かれている。美流紅の名前にまつわる話だけは映画にも残っているが、それ以外は尺の都合上、削らざるを得なかったのだろう。原作を読んでいる人間からすると少し寂しいが、映画は映画として尺の中でよくやっていると思う。

『万事快調〈オール・グリーンズ〉』DVDは8月26日発売

そして、ちょうどいいタイミングでDVDが発売される。

「万事快調〈オール・グリーン」に通常版のDVDは8月26日発売

 

俺としては、この映画を見ていない人には、とりあえず観てほしい。

 

そして気に入ったなら、手元に置いておいてほしい作品だ。

 

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まとめ

ここまで御託を並べてきたが、結局言いたいことは一つだけだ。『万事快調〈オール・グリーンズ〉』を観てくれ。ヤンキー映画がどうとか、オマージュがどうとか、そんな屁理屈は全部後付けでいい。

俺がこの映画で一番好きなのは、結局のところ友情の話なんだと思う。構造だけ見れば『ウォーターボーイズ』と同じだ。バラバラだった連中が、一つの目標に向かって束になっていく。ただしシンクロの代わりに、育てているのはハッパである。この一点だけが決定的に違う。健全な部活動でも、青春の甘酸っぱい恋愛でもなく、後ろ暗いことを一緒にやり遂げる関係性の方が、なぜか一番眩しく見えてしまう。

それに、ここまで散々「非合法だ」「閉塞感だ」と暗い言葉ばかり並べてきたが、この映画自体は決して暗い話ではない。最後の最後、圧倒的にスカッとする瞬間が待っている。何がどうスカッとするかはここでは書かない。書いたら台無しだ。

とにかく、俺はこの映画が今年観た中で一番好きだ。理屈をこねくり回しているうちは半人前で、本当に好きな映画というのは、結局「観てくれ」の一言に尽きる。だから改めて言う。観てくれ。

 

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