「表紙の絵が綺麗だったから、これにした」そう姪っ子は言った。
読書感想文としては最悪の答えだとおもう。何故、この本を選んだかというのは、読者感想文では一番大事な気がする。お手本にも、本を選んだ理由から書き始めようという事が書いてあった。
それでも、彼女が選んだこの本に罪はない。彼女にも罪はない。女の子が言う理由としてはとても素敵な部類に入るとすら思う。
読書感想文、私も苦手であった。そもそも本を読むことも文字を書くことも全く好きではなかった。姪の母である妹も同じであったはずだ。
「表紙の絵が綺麗」確かにその言葉通り、素敵な桜の絵が描かれている。
この本のストーリーは、なかなか踊りが上手にならない女の子の元に一通の手紙と靴が届くところからはじまる。
その手紙には山の地図が書いてあり、女の子はそこに向かう。着いた先は桜の木の下にある靴屋だった。
靴屋では一匹のうさぎが靴を作っていた。女の子はそのうさぎと共に30足の靴を作っていた。
仲間のうさぎ達の靴だ。
必死に靴を作り終えると、今度は靴を履いたたくさんのうさぎ達がダンスを披露してくれた。
女の子も一緒に踊った。すると、今まで上手く踊ることのできなかった回転ができるようになったのだった。
そこはとても綺麗な満開の桜の木の下だった。
疲れて眠りはて、目を覚ますと彼女は野原に一人だった。果たしてこれは夢だったのか。しかし、その後彼女は実際にダンスが上手くなっていた。苦手だったくるくると回る振り付けもできるようになっていたのだった。
この話で感想文は書きにくいだろうな、というのが率直な感想だった。ここから学ぶ教訓もファンタジーすぎる気がした。
それでも「絵が綺麗だったから」という理由で選んだ彼女を間違いだったとは思わせたくはない。今目の前で必死に書いている。
眠って起きたら、宿題が終わってた。そんな事は絶対にない現実で一つでも多くの綺麗な物を彼女には見てほしいと思った。
838文字。